2018年09月20日

家賃保証事業会社分析2

家賃保証事業会社分析の第2弾です。
ここ1週間ほど、ずっと家賃保証会社、特にCasa、ジェイリース、あんしん保証について、過去の決算説明会資料などを読み込んできました。
イントラストは上記3社とはかなり違ったビジネスを目指しているので、細かくは分析しませんでした。
前回の記事で年度別の利益率推移をまとめました。
コストについて分析する前に、社員当たりの売上や利益推移を見てみます。
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社員当たりの売上推移を見ると各社上昇していますが、ジェイリースは他社の半分程度と低くなっています。経営陣も生産性の向上は重要課題と認識していて、2020年までの目標も公表しています。この目標は最低限であり、もっと上を目指しているそうですが、それでも現状の他社より低い水準です。
社員数が少ないイントラストとあんしん保証が高いのはまあ当然ですが、ジェイリース同様300人以上社員がいるのに他社に近い生産性を実現しているCasaは素晴らしいと思います。

社員当たりの利益推移を見ると、また少し印象が変わってきます。利益は経常利益を使って計算しています。
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ビジネスモデルを家賃保証のアウトソーシングに変更したイントラストは生産性が急激に改善しています。
他の3社は横ばいという感じですが、Casaとあんしん保証は高い水準から低下傾向が顕著です。
Casaが低下傾向なのは2015年の業務改革の影響です。この影響は徐々に解消しつつあるので、来年度以降改善してくると期待しています。
あんしん保証は管理会社の開拓に特化して、その他の業務はグループ会社に外注している感じでしたが、自社で家賃保証を行う商品を投入しているので、人件費などのコストが増加し、一時的に生産性が低下しているのだろうと思います。
ジェイリースは徐々に向上しているものの、他社と比べると半分から1/4という低さで、同じ家賃保証ビジネスをしていてどうしてこんなに差が出るのか不思議です。保証ビジネスは一定の規模がある方が良いので、まずは事業規模の拡大を優先しているのかもしれません。規模が確保できれば利益は後からついてくるはずなので、当面の生産性には目を瞑って全国展開に邁進しているんでしょうね。
中堅保証会社にはこれも一つの戦略なんだろうと思います。

続いてコスト推移を分析してみます。
と言っても、各社経費の計上基準が異なっている様で分析するのもなかなか大変です。
おおまかに下記の様な分類になっていると想定して分析しています。

Casa 売上原価(管理会社への支払手数料、明渡訴訟費用、貸倒引当金)、販管費(人件費、事務所費、のれん償却費他)
ジェイリース 売上原価(管理会社への支払手数料)、販管費(人件費、事務所費、貸倒費用他) 
あんしん保証は売上原価がなく、すべてのコストを販管費扱い

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各社ともまだデータが少ないですが、Casaは2015年に実施した顧客対応方法の変更で、求償債権(家賃の立替が発生している金額)が増加し、貸倒引当金や明渡訴訟費用が増加して原価率が跳ね上がっています。一方で販管費率は徐々に低下しています。
ジェイリースは原価率がなだらかに上昇し、逆に販管費率はなだらかに低下して、利益率5%前後を維持しています。
あんしん保証は販管費率はなだらかに上昇しています。

2015年以降は四半期決算も開示されているので、四半期ごとの推移も見てみます。
3社で比較しやすくするため、Casaの四半期は1期分前にスライドさせています
家賃保証は3月が業績のピークになるので、これで大体同じ時期の数値で比較できます。
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これを見ると原価率は3月を含む第4四半期が高くなっています。売上の計上の仕方は3社で異なりますが、おおむね保証期間に按分して計上しています。一方で管理会社への支払手数料は契約時に一括して経費計上しているので、3月を含む四半期の原価率は高くなります。
ジェイリースは四半期で見ても原価率が上昇傾向で、これは商品構成の変化もあるでしょうし、地盤だった九州以外のエリアでは不動産管理会社に支払う手数料率も高いと思うので、関東などでの売上構成比が高まるに連れて原価率が上昇しています。
販管費率は低下傾向でしたが、2017年からは低下が止まって横ばいという感じになっています。
ジェイリースは3社の中でも圧倒的に売上を伸ばしていますが、それにもかかわらず利益率が上がらない理由が分かりません。決算説明動画なども見ましたし決算説明資料も熟読しましたが、販管費や求償債権を分析するデータが少なくて、利益率が改善しない理由を見付けられませんでした。

Casaの原価率は年度で見ると34%まで高まっていましたが、2017年をピークに低下傾向となり、貸倒率も平常値に戻っているので来期はさらに原価率が低下する見込みです。
販管費は50%程度で横ばいとなっています。

あんしん保証もジェイリースも販管費率は4Qが低くなっています。これは販管費自体はそれほど変動がないですが、売上は4Qにピークを迎えるためです。
四半期ごとの売上推移をグラフにしてみると、各社の違いがよく分かります。
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Casaは受取った保証料をすべて保証期間で按分して売上計上しているので、四半期ごとのブレがほとんどありません。ジェイリースとあんしん保証は4Qが如実に高くなっています。ジェイリースは契約時の保証料のうち、半分は事務手続きコスト分としてその月に計上し、残り半分を保証期間で按分して売上計上しています。そのため4Qの売上が大きくなります。あんしん保証も似たような売上計上方法を取っているのだろうと思います。

ここまで分析してきて、Casaとあんしん保証、イントラストは財務諸表や決算説明資料を読めば読むほど会社について理解が深まると感じましたが、ジェイリースについては読めば読むほど利益率が低い理由が分からなくなって戸惑います。
周りの投資家でもジェイリース派の人が多いようですし、ひふみ投信も7月末までに7.6%分購入したと大量保有報告を出しています。その後も買い増しして8月15日までに9.98%、90万株弱まで買い増したという報告が出ています。
会社側にも詳しく取材しているでしょうから、きっと私には見えてないものが見えているのだと思います。
生産性が低い分改善余地が大きいという見方もできますが、生産性が低い理由が開示資料を見る限りでは分からないので、私には判断できません。会社側に取材を重ねるとその辺りがクリアになって、投資妙味が大きいという判断になるのかな〜などと想像しています。
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posted by アイル at 23:43| Comment(0) | 銘柄分析 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月16日

家賃保証事業会社分析1

家賃債務保証事業を行っている会社は4社上場していますが、簡単に比較分析してみます。
4社を上場時期順に並べてみると
あんしん保証(7183) 2015年11月マザーズ上場
ジェイリース(7187) 2016年6月マザーズ上場 2018年3月東証1部指定替え
イントラスト(7191) 2016年12月マザーズ上場 2017年12月東証1部指定替え
Casa(7196) 2017年10月東証2部上場

家賃保証事業は競争が激しく、すでに成熟産業になっているという意見もありますが、上場各社の売上推移を見てみると順調に拡大しています。
売上Enのイントラスト(似た名前の会社イントランスも上場していて紛らわしいですね)は売上が横ばいのように見えますが、自社での家賃保証事業から、家賃保証事業のアウトソーシングサービス(ソリューションサービスと呼称)に比重を移している影響であり、実際は契約件数を伸ばしています。ソリューションサービスは親会社のプレステージインターナショナルらしいビジネスモデルだな〜と感じます。
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以前と比べると市場の伸びは低下しているでしょうが、家賃保証事業も全体としてはまだ伸びていると思いますし、上位の企業に徐々に集約されているのだろうと思います。
4社とも売上は安定的に伸びていますが、このグラフだけを見るとジェイリースの売上の伸びが目を引きますね。
Casaの2017年売上が減速しているのは、滞納比率で管理会社の選別を進めて、新規契約の数より質を重視した結果です。売上は按分計上なので今期もその影響が残っていますが、徐々に影響は薄れてきます。
2018年はまだ進行期なので、上記グラフは会社計画値になります。
上場4社の中ではCasaが一番売上規模が大きいですが、非上場の大手企業が3社あります。
日本セーフティー 2017年度売上 128億円
全保連 2017年度売上高 120億円程度
日本賃貸保証(JID) 2014年売上が76億円弱でその後の情報無し

これらの非上場3社は、家賃保証契約時に全額を売上計上しているそうで、上場4社とは単純に比較はできません。
Casaは12ヵ月に按分して売上計上していますし、ジェイリースは契約金の50%を契約時に売上計上し、残り50%は12ヵ月に按分して売上計上するなど、上場各社でも売上計上方法は異なっています。
業界トップと思われる日本セーフティーは詳細の財務諸表もホームページで公開していますが、全保連は業績推移グラフのみ、日本賃貸保証は業績の記載なし!と対応が分かれています。信用力が重要な保証事業を展開しているわけですから、非上場とはいえ財務情報は開示してほしいですね。
日本セーフティーの過去5年間の業績を売上推移グラフに追加してみました。
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売上計上方法が異なっていても保証期間1年が多いと思われ、年度推移でみれば影響はほとんどないと思います。
日本セーフティーが他社を寄せ付けない成長を続けていますね。民法改正で今後連帯保証人の要件が厳しくなりますが、その影響で各社の売上の伸びがどう変化していくのか?注目していきたいと思います。

次に経常利益の推移を見てみます。
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Casaは2011年から安定的に利益を計上し続けていることが分かります。2015年に顧客対応方針を変更し、一時的に貸倒れが増加したことで利益水準が低下しましたが、それでも10億円以上の利益を上げ続けています。
一方でイントラストやジェイリースは2014年までほとんど利益を上げていません。Casaとは逆に2015年以降一気に利益を伸ばしています。ここ数年の利益成長を見るとイントラストやジェイリースが高く評価されるのも分かりますが、今後もこの成長を続けられるのか?が重要だと思います。
あんしん保証は一足早く2013年から利益体質になりましたが、その後は利益横ばいという感じです。
経常利益推移を見ると、
成長を反映して株価の伸びが期待できそうなイントラスト、ジェイリース
安定しているあんしん保証、Casaという感じです。

経常利益率で見てみるとさらに傾向がはっきりしてきます。
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経常利益率は非上場の日本セーフティーも入れてみました。安定して25%以上の経常利益率を継続していて素晴らしいですね。
Casaも2015年までは25%前後の経常利益率でしたが、顧客対応方法の変更により利益率が10ポイントほど低下しています。
利益率改善で目を惹くのはイントラストですが、2015年以降一気に他社を抜き去り、現状では業界トップクラスの利益率となっています。これは、自社で家賃保証ビジネスを行う形態から、家賃保証ビジネスを手掛けたい管理会社にアウトソーシングサービスを提供する形にビジネスモデルを変更した影響です。売上は小さくなりますが利益率は高いので、上記のような劇的な推移になります。
利益率で見るとジェイリースは低位横ばいという感じで、売上が伸びてもコストも同様に伸びていて、利益率はなかなか上がってきません。
元々ジェイリースは九州地盤の家賃保証会社で、地域密着営業で地元の中小管理会社に浸透を図ってきました。2010年に東京支社を開設し全国展開を始めましたが、全国展開に伴う人員や事務所経費の増加、後発の参入なので管理会社攻略のために魅力的な手数料水準を提案しているのか、売上は急速に伸びても利益率は上がってきません。
あんしん保証は15%程度の利益率を安定的に計上してきましたが、2017年以降はジェイリース並みに低下しています。あんしん保証はアイフルの傘下企業で、同じくアイフル傘下のライフカードと提携して家賃保証ビジネスを展開しています。自社で保証を提供するというより、不動産管理会社の開拓や保証審査が業務の中心で、実際の保証はライフカードが担っている商品(ライフあんしんプラス)が中心という感じです。そのため少人数で運営可能で、安定した利益率を計上してきました。2014年からは自社で保証するあんしんプラスの販売を開始しました。
同じ家賃保証ビジネスをしていても、ビジネスモデルや戦略はかなり異なるので面白いですね。

現状の売上・利益推移を見ると、日本セーフティーが一番魅力的です(笑)
成長株志向の投資家にはイントラスト、利益率が平均に回帰するなら逆張り派好みのCasa、あんしん保証という感じです。
ジェイリースは今後も売上拡大が続くかどうか次第で判断が分かれそうです。利益面のバッファが小さいので、売上の伸びが鈍化したり、不良債権比率が上がると厳しいかなという感じがします。まあ現状売上は順調に伸びているので問題ないんでしょうが😃
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ラベル:Casa 家賃保証
posted by アイル at 14:02| Comment(0) | 銘柄分析 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする