2020年08月04日

Casaのストック売上について

先日の勉強会では、Casaと同業他社との利益率比較に加えて、ストック売上についても議論になりました。
今回の記事ではCasaのストック的な売上について、私なりの考えをまとめてみます。
質疑応答の中で毎年半数くらいが解約になるという話が出て、その部分が独り歩きして業績が不安定だと誤解されている部分もありそうなので、その点も含めてまとめてみます。

Casaの主な売上は、家賃保証契約時に頂く初回保証料(家賃の50%)と、保証契約更新時に頂く年間保証料1万円になります。
保証契約が続く限り毎年1万円が入ってくるので、この部分をストック売上と説明しています。
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保有契約件数の伸びにより、年間保証料も年を追うごとに積み上がってきていて、現在では40億円を超える規模になっています。
議論になったのは契約期間で、短期間で解約されてしまうとストック売上とは言えないので、平均的な契約期間はどの位か?という質問が出ました。
サブスクビジネスでは顧客獲得時にコストが多く発生し、それを毎月の使用料で回収していくビジネスモデルなので、サブスクではいかに長く契約を続けてもらうかが重要になります。短期で解約されてしまうと、契約前に発生した顧客獲得コストを回収できず赤字になってしまいます。
そういった懸念からの質問だろうと思います。

会社側からの回答は、平均的な入居期間は2年半から3年程度で、既存の契約は毎年半数程度が解約になるという説明でした。短期間で解約されるのであればストック売上とは言えず、毎年半数が解約されるなら業績も不安定になってしまうのではないか?と誤解された方もいるように感じました。
こういった議論はサブスクビジネスではその通りだと思いますが、Casaはサブスクビジネスではありませんし、契約期間が長ければ業績が伸びるというわけでもありません。
あえて言えばCasaは初回契約時の売上が一番大きいので逆サブスクビジネスです(笑)
月額家賃が2万円未満の場合は年間保証料の方が多くなるので、長く契約いただいた方が売上の増加が見込めることになります^_^;

家賃を8万円と想定して3年間の売上を考えてみます
(1)平均的な3年ごとに転居するケース 6万円
 初回保証料4万円+年間保証料1万円*2回
(2)更新料の発生する2年で転居するケース 9万円
 初回保証料4万円*2回+年間保証料1万円*1回
(3)毎年転居するケース 12万円
 初回保証料4万円*3回+年間保証料1万円*0回

もちろん毎回Casaが選ばれるわけではないので、上記の2と3は毎回Casaが選ばれた場合の最大売上想定であり、最悪の場合は初回の4万円しか売上がない可能性もありますが、適度に解約された方が売上が増えることになります。
サブスクと違って契約期間が長ければ売上・利益が最大になるのではなく、逆に短期間の契約で転居してくれた方が売上・利益が最大になる可能性があるので、逆サブスクビジネスです(笑)

年間保証料が家賃に関係なく1万円というのはリスクに見合っていないのではないか?という質問も出ましたし、私もこの点は疑問に感じていて株主総会でも質問しました。現状では年間保証料がお値打ちなので、初回保証料の方が業績への影響が大きくなります。
毎年半数程度の契約が解約になるというのもあまり意識していませんでしたが、賃貸契約で更新料が発生する2年目で転居する人も多い事を考えると、半数程度が毎年入れ替わっていくというのも確かにその通りなんだろうな〜と納得しました。

下記グラフはCasaの保有契約件数(左軸)と四半期ごとの新規契約件数の推移です。
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四半期毎では引っ越しシーズンの1Q(2月から4月)の新規契約件数が多いですが、引っ越しが多いということは解約も多いので、保有契約件数はなだらかに上昇しています。
毎年半数程度が入れ替わりながらも保有契約件数を着実に伸ばしているので、解約しても新居で再度Casaの保証を利用して頂いたり、他社からの切り替えに成功しているのだろうと思います。保有契約件数を着実に伸ばしながら、適度に転居してくれるとCasaの業績がより伸びていくということですね
更新料の発生する2年目で転居するのは入居者の都合であり、それはCasaの事業にとって悪い事ではないので、保有契約件数が着実に伸びていれば問題はないと思います。2年目で転居するのは入居者の都合なので、他の家賃保証会社も同じように毎年半数程度は解約が発生していると思います。

ストック的な売上の割合を高めて、さらに業績を安定的に伸ばすために重要になってくるのが、一棟丸ごとCasaが保証を引き受ける既存切替戦略です。
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一棟丸ごとCasa保証になれば、大家さんや管理会社の手間も省けますし、Casaも安定した売上が期待できます。現状は年間保証料をストック売上としていますが、一棟丸ごとCasa保証になればこの賃貸物件の売上すべてがストック売上になります。もちろん空室が出ればその部屋はストック売上にはなりませんが^_^;、家主ダイレクトでは空室を埋めるお手伝いもしているので、賃貸経営をサポートするサービスを充実させることで、ストック売上のサービス収益を増加させ、さらにそれが一棟丸ごとCasa保証につながることで、ストック売上が増加していくという理想的な流れになることを期待しています。

最後に同業他社も含めた保有契約件数の推移を見てみます。
ジェイリースは気まぐれにしか発表されないので、折れ線グラフにすることができず、近似線を引いています。他社と同じ定義なのかもよく分かりませんので、参考程度に見て頂ければと思います。2016年3月期までは年度末の件数で、それ以降は四半期末の件数をプロットしています。上場前だとデータが無い時もあるので、一部途切れた折れ線グラフになっています。
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保有契約件数ではジェイリースが上場家賃保証会社のトップになっているようですが、売上や利益では大きな差があり、実態がよく分からない会社ですね^_^;
家賃保証はもう頭打ちだと言われながらも各社とも着実に契約件数を伸ばしてきています。まだまだ連帯保証人が必要な賃貸契約が多く残っていることを表しているのではないかと思います。
4月の民法改正で機関保証の需要は確実に伸びているので、コロナの影響で一時的に見えにくくなっていますが、今後も家賃保証需要は伸びていくのではないかと思います。
Casaは手間のかかる自主管理大家さん向けの商品展開にも力を入れているので、レッドオーシャンでしのぎを削っている同業他社よりも伸び率は高くなってくるのではないかと期待しています。

8月6日にジェイリース、7日にあんしん保証の決算発表が予定されているので、これらのグラフもアップデートして推移の変化を確認してみたいと思います。
ジェイリースはもう少し情報開示してくれると比較しやすいんですが^_^;
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ラベル:家賃保証 Casa
posted by アイル at 23:57| Comment(0) | 銘柄分析 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Casaと競合他社の利益率比較

昨日はCasaの会社説明会とコモンズ投信の伊井社長の講演会を開催しました。
オンライン参加も含めて多くの皆さんに参加いただきありがとうございました。
Casaの質疑応答の中で、同業他社と比べた利益率の差について質問が出ましたが、当事者としては説明をしにくい部分もあると思うので、私なりに利益率の差異要因についてまとめてみます。

まず上場家賃保証会社の売上推移は下記の通りです。(2020年度は計画値)
各社とも売上が伸びていますが、イントラストは2015年以降売上が伸び悩んでいます。これは家賃保証事業からソリューション事業への転換を図っているからです。
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各社の経常利益推移は下記の通りです。
上場時期が会社によって違うため、グラフの開始時期が異なっています。
営業利益ではなく経常利益にしているのは、家賃保証事業は支払金利まで含めて比較した方がより正確だと思うからです。
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今では高利益率を誇るイントラストも、2014年度まではほとんど利益が出ていなかったことが分かります。しかしながら2015年度以降、売上はあまり伸びていないにもかかわらず利益は急激に伸びています。
ジェイリースは売上は勢いよく伸びているものの、利益は上場前も上場以降もほとんど出ていません。
あんしん保証は売上が少なかった頃から安定的に利益が出ています。これは貸倒リスクを主要株主だった信販会社に引き受けてもらっていた影響なのかなと思います。
一方Casaは家賃保証事業のパイオニアであり、安定的に高い利益を継続しています。
2013年度をピークに利益が減ったものの今は回復傾向にあるのは、過去の説明資料などを見ればご理解いただけると思います。

質問が出たのは各社の利益率の差ですので、経常利益率の推移を見てみます。

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今では一番高利益率を誇るイントラストですが、2014年度までは4社の中でも最下位だったのは意外ですね。
イントラストとあんしん保証の利益率推移を見ると、自社で貸倒リスクを取ると回収ノウハウ次第ですが利益率が低くなり、貸倒リスクを他者に転嫁すると高利益になるという感じがします。
イントラストは自社でリスクを取る保証事業から、審査や督促、回収などの業務代行に特化していくことで、ほとんど利益が出ない状況から高収益企業に変化を遂げました。これは親会社であるプレステージインターナショナルの影響も大きいのかなと思います。
あんしん保証は当初は信販会社に貸倒リスクを転嫁していましたが、自社で保証する商品を投入して自社でもリスクを取るようになり、利益率が若干低下傾向になっています。
ジェイリースは商品構成も違いますしあまり比較対象になりませんが、地盤の九州で事業展開していた頃は安定的に利益が出ていましたが、拡大路線に転じて全国展開を進めて以降は、無理な販促をしているためなのかほとんど利益が出なくなってしまいました。
Casaは2014年度頃までは高利益率を続けていましたが、顧客に寄り添った回収方法に変更してからは15%程度の利益率となっています。
Casaの説明会に複数回参加したり、株主総会後の経営報告会に参加している人はよく理解していると思いますが、2014年度頃までのCasaは他の家賃保証会社のように滞納家賃の回収を行っていました。しかし2015年以降回収方法を大きく変更し、顧客本位の回収方法に見直しています。家賃を滞納するということは入居者に何か問題が発生しているので、督促するよりもまずはどんなお困りごとが発生しているのかをお聞きし、セカンドハーベストと提携して食料の支援を行ったり、行政の支援サービスを紹介するなどして問題解決のお手伝いをして生活を立て直していただき、家賃を支払えるような状況になるようお手伝いをしています。
家賃滞納者の9割は口座への入金忘れなどですぐに支払ってもらえますが、問題が発生している残り1割程度の人に対して、上記のような手厚いサポートをしています。そのため以前と比べると人手が掛かったり、家賃回収までの期間が長くなったりするので、上記のような利益率になっています。
手厚いサポートをしても15%の利益率を達成しており十分に高い利益率だと思いますが、Casa設立時の経緯から筆頭株主がファンドで2回変わっており、35億円ほどののれんが残っています。これを毎年2.6億円ほど償却をしているので、この影響を除けば現状でも19%程度の経常利益率になり、他社と比較しても十分に高利益率だと思います。

イントラストのソリューション事業ですが、売上の内訳推移は下記の通りです。
イントラストの決算説明資料から抜粋していますが、当初は保証事業だけの状態からソリューション事業が半分くらいになっています。
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保証サービスは保証料を頂いて家賃滞納リスクを引受けますが、ソリューションサービスは大手管理会社の要望に沿って、入居希望者の審査や滞納が発生した場合の督促、回収などの業務を提供するサービスで、自社では貸倒リスクを取りません。そのため売上単価は減りますが、コスト要因も大幅に減るので、利益率は高くなります。
保証サービスのアウトソーシングを行うというのが、イントラストのビジネスモデルです。Casaとどちらが優れているか?という問題ではなく、どちらもそれぞれの戦略に基づいてビジネスモデルを磨き続けており、単純に利益率だけを比較してもあまり意味はないと思います。
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posted by アイル at 01:42| Comment(0) | 銘柄分析 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする