2020年11月26日

家賃保証会社2020年Q2決算分析4

家賃保証会社各社の第2四半期決算が出揃ったので、何回かに分けて分析してみます。

貸倒引当金割合の捉え方には2通りあると思います。
1つは前回の記事でも書いたように、引当金割合が低いと想定以上に家賃の焦げ付きが発生した場合、損失処理が必要になって利益が減ってしまうので、リスクが高いという捉え方です。
もう一つは全く逆で、引当金割合が低いということは、求償債権の中身が良好(比較的回収しやすい債権の割合が高い)で少額の引当金で十分であり、リスクが低いという捉え方です。
各社がどちらの状況に近いのか考えるためには、求償債権の中身が開示されるのが一番ですが、なかなか開示されないので、引当金割合の過去からの推移や利益率などを総合的に見る必要があると思います。
y15.jpg
y4.jpg
引当金割合の過去からの推移は上記の通りです。
イントラストのように引当金割合が一貫して低下しているということは求償債権の中身が良くなっていると考えられるので、良い傾向だと思います。債権の中身が良いということは立替家賃の回収が容易ということなので、貸倒れコストが最小限で済み、その分利益率も高くなります。家賃保証事業にとって貸倒れコストの影響は大きいので、利益率が高い=貸倒れコストが少ないとも言えると思います。
あんしん保証の場合は、引当割合が最近は上昇傾向で、引当金割合も比較的高めです。あんしん保証は信販会社と提携して初期の貸倒れリスクを負わない商品が中心でしたが、自社で保証する商品の割合を徐々に高めている影響が出ているのではないかと考えています。
Casaの引当金割合は、上下の変動はありますが横ばい傾向で、かなり高い水準になっています。Casaの利益率が比較的高いことを考えると、会社側が説明しているように保守的に貸倒引当金を積んでいるという説明に、特に違和感は感じていません。
ジェイリースの場合はイントラストと逆で、一貫して引当金割合が上昇しています。
これは全国展開を進めて、比較的貸倒れが発生しやすい都市部の割合が高くなってきたこと、回収より売上拡大が優先されてきたことなどが要因だと思いますが、まだしばらくは貸倒引当金の積み増しが続きそうです。
ジェイリースは今回の2Q決算から説明資料の内容が一新されて、省略された開示内容も色々ありますが、一方で新たに開示された資料もあります。
前回の記事でも紹介した代位弁済立替金(求償債権)の期間別内訳を示したグラフです。
y3.jpg
これはとても重要なグラフだと思いますが、残念ながらそれぞれの内訳の数値が分からないので、グラフの高さから数値を想定してグラフを作り直してみました。
滞納発生から期間が経つにつれて回収は難しくなっていくので、決算説明資料とは上下を逆にして期間の長い方から積み上げグラフにして、立替金の貸倒れに備えて引き当てている貸倒引当金の水準を折れ線グラフで重ねて表示しました。
y30.jpg
このグラフを見ると、回収のしやすい3か月以内の立替金から回収が進み、この半年で総額は若干減少しています。一方で回収難易度の高い1年超の立替金は増加しています。3か月から1年以内も減少していますが、回収できたものもあると思いますが、回収できないまま半年が経過して1年超になったものもかなりありそうです。立替金の中身は悪くなっていると言えると思います。
それに対して現状の貸倒引当金の水準は、1年超の立替金を回収するのは困難を伴うので、まだ不足している水準だと思います。この3本のグラフ推移を見ただけでも、半年ごとに1年超の立替金の割合が増加しているので、回収するなり損失処理するなりしないと、今後も時間が経つにつれて1年超の部分が増加していきそうです。
とはいえ期間別の立替金内訳を開示したのは、現状を理解するうえでとても良いことだと思います。他社にも広がると比較しやすくて良いですし、投資家や株主の安心にもつながると思います。他社も追随すると良いですね。

次は株主資本比率を比較してみます。
ジェイリースだけが10%程度と低くて、他社は50%から70%程度と高水準です。
保証会社なので財務面での安全性も重要であり、株主資本も厚い方が顧客からも安心されると思います。
y27.jpg
家賃保証事業では保証料を事前に受け取りますが、受取時にすべてを売上計上するのではなくて、サービス提供期間に渡って按分計上しています。そのため受け取った保証料は、売上に計上するまでの間は前受金としてバランスシートに計上されています。これは負債扱いですが、実質的には将来の売上であり、保証料は受け取り済みで返還もしないので、誰かに支払い義務のある負債ではありません。
売上が伸びている会社ほど前受金の影響が大きくなり、負債が多いように見えてしまうので、前受金を除いた株主資本比率の方が実態を表していると思います。
y28.jpg
前受金を除くと、Casaとイントラストは80%前後まで跳ね上がり、ジェイリースも若干改善します。
Casaとイントラストは財務面でも他社より安全性が高いと言えますね。

株主資本比率の過去からの推移は下記の通りです。こちらは前受金の修正はしていません。
y29.jpg
Casaとイントラストは高値圏で安定推移(笑)
ジェイリースはずっと低空飛行、あんしん保証は高値圏から低下傾向です。
自社で保証したり、家賃の事前送金型のサービス割合が高くなると、一時的に立替払いする家賃が増加して運転資金の借り入れなども必要になるので、事業の拡大に伴って低下してくるのはやむを得ないと思います。最近は50%前後で落ち着きつつあるので、問題になるような水準ではないと思います。
リスク面に関係する数値を比較すると、ジェイリースの弱さが目立ってしまいますね。
売上拡大優先でここまできた影響ですが、前期から行っている体制整備で今後どのような変化が表れてくるのか、四半期決算ごとに見守っていきたいと思います。
 応援ポチッとお願いします!
posted by アイル at 22:08| Comment(0) | 銘柄分析 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月25日

家賃保証会社2020年Q2決算分析3

家賃保証会社各社の第2四半期決算が出揃ったので、何回かに分けて分析してみます。
今回はコスト面で影響の大きい求償債権(保証会社が立て替えた家賃)について比較してみます。

家賃保証事業で最大のリスクは家賃の立て替えが増加すること、そして立て替えた家賃の回収が困難になることです。立替えた家賃は求償債権に計上されます。
家賃が引き落とせないのは初回の振替時が多いので、新規契約が増えていくと求償債権も増加しますし、保有契約件数が積み上がっていくと求償債権も増加していきます。そのため契約の増加に比例して求償債権が増えている分には問題ありません。
各社の求償債権の推移は下記の通りです。上場時期が異なるので、可能な限り過去にさかのぼってグラフ化しています。
参考までに売上推移グラフも貼っておきます。
y5.jpg
y11.jpg
売上はCasaの方がジェイリースより大きいのに、求償債権の額はジェイリースの方が圧倒しています。イントラストとあんしん保証はほぼ売上に見合った水準になっています。
ジェイリースは売上拡大が最優先という感じで事業展開してきたので、立替家賃の回収が後回しになり求償債権も積み上がっていました。立替えた家賃は3か月を超えると回収が段々と困難になり、1年を超えるようだと回収は困難で裁判などに移行するケースが多くなります。
求償債権が積み上がっていくと長期の債権の割合も高まってくるので、貸倒引当金の計上額が足りなくなり、監査法人の指摘もあって貸倒引当金を積み増すことになり、2年連続で過年度決算の訂正を行っています。
そのような状況なので、営業部門の人員を債権管理部門に回すなどして求償債権の回収や管理強化を行い、その効果が出ているようでここ1年ほど求償債権の推移が横ばいになっています。
下記のグラフは保証残高(毎月保証している家賃の総額)と求償債権、それに対応する貸倒引当金の推移をまとめたものです。
保証残高も重要な指標ですが、ジェイリースは年2回しか公表していないので、プロットと傾向線の表示になっています。最新の2Q決算では開示されなくなったので、現状どうなっているのかは分かりません。重要指標は良い時も悪い時も継続して開示してほしいものです^_^;
y25.jpg
普通は保証残高に比例して求償債権も増加し、同様に貸倒引当金も増加していきますが、ジェイリースは求償債権の伸びが高過ぎました。最近は伸びが低下していますが、求償債権の動向は重要なので今後の傾向を注視する必要があると思います。

Casaは2016年頃に立替家賃の回収方法を変更し、まずは顧客に寄り添って生活再建を支援することで家賃の回収につなげる方針にしたため、一時的に求償債権が増加し、その後徐々に回収してきたので2018年頃までは横ばい傾向で推移してきました。2019年度からは契約件数の増加に比例する形になって正常化しましたが、コロナの影響で一時的に求償債権が増加し、現状は一時的な増加分を回収中です。
イントラストは契約件数の増加に比例して推移しています。
あんしん保証もほぼ同様の傾向ですが、直近では減少しています。

求償債権比率の推移を見ると、各社の違いがより明確になります。
求償債権比率=求償債権/保証残高
イントラストは保証残高を開示していないので、求償債権比率が計算できません^_^;
y26.jpg
契約件数が増えていくと保証残高も増加していき、毎月ほぼ一定割合で家賃の立替が発生するので、求償債権比率は普段は7〜9%前後でそれほど変動しません
Casaはコロナの影響で一時的に悪化しましたが、すでに低下傾向です。来月発表される3Q決算でどのような推移になるのか注目しています。
これら2社と比べてジェイリースは一貫して増加傾向が続いてきました。直近では横ばい傾向ですが、今まで2Qと4Qに開示されていた保証残高の開示が今2Qは無かったので、足元どの程度改善しているのかはよく分かりません。

最近は横ばいになったとはいえ求償債権額が一番大きいジェイリースですが、立替家賃が回収できないリスクに備える貸倒引当金の引当割合は他社より低い水準です。イントラストは優良顧客向けが多いので引当割合が低くなっています。
Casaは2016年、2017年頃に回収方法の変更で貸倒れが増加しましたが、貸倒引当金の計算上過去3年の実績値を使っているので、まだ影響が残っていて引当割合が高くなっています。4Qで実績値に洗い替えするので、今期の貸倒実績率が2017年実績よりも低ければ、4Qで貸倒引当金割合が低下することになり、利益改善要因になります。
y15.jpg
y3.jpg
ジェイリースも貸倒引当金の計算方法は同じような感じなので、4Qで実績値に洗い替えされます。
今回の決算説明資料で開示された求償債権(ジェイリースでは代位弁済立替金)の期間別内訳では、回収が困難な長期債権の割合が高くなっており、この部分にはより多くの貸倒引当金を計上する必要があるので、4Qで貸倒引当金を積み増す必要が出てくるかもしれません。
3Qまでは比較的回収しやすい期間の短い債権を回収して利益が増加していますが、長期債権の動向については今後も注意が必要だと思います。

貸倒引当金割合の推移は下記の通りです。
y4.jpg
Casaは2016年、2017年頃に貸倒れが増加した影響で引当金割合が上昇していましたが、ピークは越えて今後は徐々に低下傾向になっていくと予測しています。過去の水準や他社と比較すると、Casaも50%くらいで落ち着くのかなという感じです。
イントラストは2014年頃まで立替家賃の急増に苦しんでいたので引当金割合も高水準でしたが、立て直しに成功してからは低下傾向が続いています。こちらもどの程度の水準で落ち着くのか気になりますね。
ジェイリースは地盤の九州で事業展開していた頃は貸し倒れることも少なかったので、あまり引当金を積んでいませんでしたが、そのままの体制で全国展開を進めて一気に売上を拡大したため、回収にまで手が回らず求償債権が急増することになりました。過去の回収実績が高かったことから貸倒引当金の繰入額も本来の必要額よりも小さくなり、貸倒引当金の積み増しが必要となり、過年度決算の訂正となりました。上記の通り引当金割合は年々高くなってきましたが、これで十分なのかは分かりません。こちらもどの程度の水準で落ち着くのか気になりますね^_^;
これらの数値は財務諸表で四半期ごとに状況が把握できるので、今後も継続して推移を見守っていきたいと思います。

家賃の立替えが増加して回収に時間がかかるようになると、毎月求償債権が積み上がっていきます。立替えた家賃は時間が経つにつれて回収はより困難になり、回収に要するコストも上がっていきます。回収が困難になると貸倒実績率が高くなるので、貸倒引当金の積み増しが必要になり、利益を圧迫することになります。
貸倒引当金必要額=求償債権額×貸倒実績率 なので、求償債権が増加すると額も率も高くなるという負のスパイラルに落ち込むリスクが高まります。保証残高や売上の伸びと乖離するような求償債権の増加には、十分に注意した方がいいと思います
 応援ポチッとお願いします!
posted by アイル at 18:19| Comment(0) | 銘柄分析 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月23日

家賃保証会社比較番外編

家賃保証会社は4社が上場していますが、その他に上場会社の子会社として売上が10億円以下の規模の小さい会社が2社ほどあるようです。大手の信販会社も家賃保証を手掛けていて、売上も100億円以上と思われますが、主力事業ではなくて情報も少ないため、今回の記事では割愛しています。
色々と調べていたら、家賃保証会社社員が本気で何でも答えたらというブログで、大東建託子会社で家賃保証を行っているハウスリーブも業界大手ということが分かりました。
業界の中の人の情報はとても参考になりますね!ありがとうございます。
仲介会社や管理会社が自社で家賃保証を行っているケースもあるので、家賃保証を手掛けている会社は多岐に渡ります。

番外編では非上場の大手家賃保証会社との業績比較をしてみます。
非上場企業は財務情報があまり公開されていませんし、数値ではなくグラフで公開している会社もあるので、あくまで参考程度の比較としてお読みくださいね。
非上場の大手家賃保証会社は下記の4社があり、上場企業でトップのCasaは業界5位になります。

日本セーフティーNS 業界トップ 12月決算

全保連ZHR 業界2位 3月決算

ハウスリーブDK 大東建託子会社 業界3位 3月決算

日本賃貸保証JID 業界4位 10月決算

今年の5月には、全保連が2023年秋をめどに東京証券取引所第1部への上場を目指しているという記事が出ましたが、その後どうなっているのでしょうか?記事では今秋に増資して、2023年秋を目途に東証1部に上場、時価総額は300億〜600億円程度を見込むと書いてあります。
記事の中にもあるように、全保連は2012年頃まで業界売上トップでした。

非上場4社と上場4社の売上推移は下記の通りで、2020年の数値は計画値になります。
上位2社の競争は熾烈ですが、久し振りにトップが入れ替わるのでしょうか?
ハウスリーブは、大東建託やハウスコムなどのグループ会社向けの保証会社のようです。2016年度までは一気にトップになるような勢いでしたが、グループ内企業向けが中心で市場が限定されるためか最近はやや減速気味です。
JIDも2017年度まではトップを奪う勢いでしたが、社長が交代するなど社内が揺らいでいるのか減速して、このままでは5位に後退しそうな感じです。
z1.jpg
総じて非上場の会社の方が規模が大きくて、売上の伸びも高くなっています。
普通は上場企業の方が信用力も高くて、人財などの資源にも恵まれているので成長しやすいですが、家賃保証事業の場合は非上場の方が事業展開がしやすいのでしょうか^_^;
上場企業にも頑張ってほしいですね。

次に経常利益の推移を比較してみます。
なんか1社だけ異常な利益額の会社がありますね。他社の2倍近い利益をあげています。
大東建託子会社のハウスリーブなんですが、自社物件向けの保証会社なので紹介手数料の支払いは必要ないですし、営業活動も不要、リスクの高そうな申込みはスルーして他社に流すこともできそうなので、人件費などを除けばほとんど利益になりそうな感じです^_^;
利益が出て当然ですよね。
z6.jpg
経常利益率推移を見ても同様で、他社の2倍以上の利益率を誇っています。
それでも利益率は徐々に低下しているようです。
z5.jpg
ハウスリーブが入っているとグラフが歪になってしまうので、以降は除いて見ていきます。

日本セーフティーは利益がきれいに伸びています。
2020年度は各社の計画値です。上場企業は四半期ごとにアップデートされるのである程度信ぴょう性が高いですが、非上場だと期首の計画値で、四半期ごとの見直しや業績の進捗状況も分からないので、全保連の今期利益がこんなに伸びるのかは、結果が出るまで分かりません。
z2.jpg
売上では非上場の大手3社が熾烈なトップ争いをしてきましたが、利益面で見ると日本セーフティーの圧勝です。
2013年頃まではCasaも良い勝負をしていましたが、利益の追求より顧客に寄り添う方向に舵を切ったので、現状では首位と差が開いてしまいました。

次に経常利益率推移を見てみます。
利益率で比較すると少し景色が変わってきます。(もちろんハウスリーブは除くw)
z3.jpg
日本セーフティーは安定の高利益率キープですが、事業を立て直して優良顧客と二人三脚で業績を伸ばしてきたイントラストもトップクラスの利益率を維持しています。
Casaは2013年度は利益率トップでしたが、営業方針を見直したことで現状は2番手グループとなっています。ただのれん償却の影響を除くと20%近い利益率になるので、2番手グループの中でも実質的には上位に位置しています。
全保連は売上規模はトップクラスですが、利益率では2番手グループに甘んじています。2019年度に利益率が低下しているのは、基幹システムの入れ替えなどに投資した一時的な要因もあるようですが、売上規模で1.5倍以上の差があるCasaと同程度の利益率というのは物足りないですね。

業界トップの背中はまだまだ遠いですが、Casaも新商品を積極的に投入したり、売上の拡大にも力を入れているようなので、これからの展開に期待しながら見守っていこうと思います。
 応援ポチッとお願いします!
posted by アイル at 19:09| Comment(0) | 銘柄分析 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月22日

家賃保証会社2020年Q2決算分析2

家賃保証会社各社の第2四半期決算が出揃ったので、何回かに分けて分析してみます。
2Qまでは各社とも業績は順調に推移していますが、今後の売上見通しについて考えてみます。

売上のベースとなるのは新規契約件数や保有契約件数ですが、新規契約件数は開示していない会社が多いので、まずは保有契約件数の推移を見てみます。
ジェイリースは2Qと4Qに保有契約件数を開示していたので、近似線で表示しています。今期の2Q決算では開示されなくなったのでプロットしていません。なぜ今期からジェイリースが保有契約件数を開示しなくなったのか気になりますね^_^;
他の3社は四半期ごとに開示されています。
Casaとジェイリース右端のプロットは、前期末の決算説明資料に掲載されていた今期末の目標値になります。
y10.jpg
Casaとイントラストは、コロナ下でも順調に保有契約件数を伸ばしています
上記2社と比べると若干伸び率は低いですが、あんしん保証も保有契約件数を積み上げています。
ジェイリースは開示されていないので分かりませんが、前期までは4社の中でも一番高い伸びを続けてきました。その反面立替家賃が増加して利益面を圧迫していたので、前期の半ばからは営業人員を債権回収部門に異動させて、債権回収に力を入れるようになりました。その結果立替家賃の回収が進んで利益面では大幅に改善しています。成長より回収に重点を変えているので、新規契約が減少して保有契約件数も伸びが鈍っている可能性があります。
再成長を目指すうえで内部管理体制を再構築するのは必要なステップですが、伸びが低下したから保有契約件数を開示しなくなったのであれば、企業の開示姿勢としては少し問題ではないかと思います。

四半期ごとの売上推移を見ると、季節変動の大小で違いはありますが4社とも順調に伸びています。季節変動の大小は、保証料の売上計上方法の違いだと思います。新規契約は3月が一番多いので、保証料を新規契約月に計上する割合が高いほど、売上の季節変動は大きくなります。
y5.jpg
売上は全社右肩上がりでも、前年同期比の売上伸長率推移を見ると、少し様相が変わってきます。
あんしん保証の18Q1と19Q1はブレが大きいですが、これは17Q4で引越し難民が発生して、18Q1に引越しがずれた影響が大きく出ているためだと思います。
この影響を除けば少しずつ売上伸長率も伸びている傾向です。
y19.jpg

イントラストは社長も強調しているように、伸長率で見てもブレは小さくて年々伸長率が高くなっています。まだ売上規模が小さいですが、理想的な成長ですね。
20Q2で低下しているのは、家賃保証事業ではなく医療費用保証の売上がコロナで横ばいだった影響だろうと思います。年々伸び率が高くなっているのも、成長分野の医療費用保証が伸びているからと言うこともできそうです。
Casaもイントラストと同じような傾向で伸長率を高めてきましたが、19Q2以降は伸長率が横ばいになっています。顧客管理を厳しくしたり、新商品の家主ダイレクトへの切り替えを進めている影響とともに、Casaは売上規模が一番大きいので、伸長率を高め続けるのは難しいという面もあると思います。
一方、ジェイリースは伸長率が一貫して下がってきています。売上規模が急激に大きくなってきたので、Casa同様に伸長率を維持することが難しくなっているとは思いますが、少し低下スピードが急すぎる感じはしますね。

今後の売上を予測するためのデータとして、前受金の推移も重要になります。
保有契約件数はジェイリースが開示しなくなったので比較できませんが、前受金はバランスシートの費目なので継続比較が可能です。ただ契約方法の違いなどから前受金の計上方法は各社異なるので、単純に比較することはできません。Casaとイントラストは保証料を12等分して毎月計上ですが、ジェイリースは2020年3月期から計上方法を変えています。詳しくは2019年3月期決算説明会資料をご覧ください。
計上方法を変えた一括支払型の商品は売上の4割程度を占めていますが、売上の半数を占めている毎年支払型(Casaなどと同様の商品)の計上方法は分かりません。
あんしん保証の前受金が少ないのは、信販会社などと提携して保証商品を提供している影響だろうと思います。
Casaやジェイリースで四半期ごとに波があるのは、3月の引っ越しシーズンに契約が増加するので前受金も積み上がり、4月以降は取り崩して売上に計上するので徐々に減っていくためです。
基本的に売上の季節変動が大きい=契約月に売上計上する割合が高い=前受金の計上額が少ないので、季節変動も小さくなる、という関係になります。
y16.jpg
近い将来の売上高である前受金の推移を見ると、あんしん保証以外は徐々に積みあがっていて、今後も売上が増加することが期待できそうです。あんしん保証は前受金では実態がよく分からないので、保有契約件数や保証残高推移を見た方が良いと思います。これらのデータは順調に増加しています。他の3社と比較するとあんしん保証は伸び率が低く見えてしまいますが、単独で見れば十分に安定した成長を続けていると思います。上場が2015年11月と4社の中で一番早いので、財務データの蓄積が多いのも分析する上での安心材料ですね。
y20.jpg
前受金についても前年同期比の推移をグラフ化してみると、下記の通りとなります。
あんしん保証は前受金額が小さいので変動率が大きくなり、一部割愛しています^_^;
y17.jpg
売上伸長率と同様の傾向で、イントラストはまだ金額が小さいので伸長率も増加傾向、Casaは他社の4〜6倍の前受金額なので伸長率は横ばい傾向、ジェイリースは横ばい状態から最近は低下傾向になっています。
ジェイリースは売上の伸長率も低下傾向ですが、前受金の伸長率も低下傾向に変化しているので、少し心配ですね。拡大路線を一時的に修正して内部固めを行うことは重要ですが、どのくらいの期間で再度成長路線に戻せるのか注視する必要がありそうです。
ジェイリース2019年3月期決算説明会資料から抜粋
y18.jpg
今回は今後の売上に影響するデータを見てきました。
売上金額だけを見るのではなくて、変化率の推移や関連するデータなども含めて見ていくとより深く理解することができますし、企業体質やビジネスモデルの違いなども見えてきて面白いです。
 応援ポチッとお願いします!
posted by アイル at 13:56| Comment(0) | 銘柄分析 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月20日

家賃保証会社2020年Q2決算分析1

家賃保証会社各社の第2四半期決算が出揃ったので、何回かに分けて分析してみようと思います。
まずは業績の推移についてです。
ジェイリース、イントラスト、あんしん保証の2Qは7〜9月ですが、Casaは他社と1ヵ月決算月がずれているので、以降のグラフではCasaの2Qに当たる5〜7月実績を1Qにプロットしています。決算期で合わせるのではなくて、実際の月に近いように合わせて表示しています。
そのため繁忙期である2〜3月は各社ともグラフ上では4Qになります。
y5.jpg
上記の四半期ごとの売上推移を見ると、各社とも右肩上がりで売上を伸ばしています。
4Qが引越しも多くて繁忙期になりますが、引越し難民が問題になった2017年4Qは、引越しが4月以降にずれて1Qの落ち込みが小さくなっています。
Casaとイントラストは、契約時に1年分をまとめて受け取る家賃保証料を12か月に按分して計上しているので、四半期ごとの売上のブレは小さくなります。
4Qで契約が増加してストックが積みあがるので、4Qで売上が階段状に増加して、以降の1Q〜3Qはなだらかに増加する傾向になります。
一方でジェイリースとあんしん保証は4Qで売上が大きく増加し、1Q以降は減少する傾向です。ジェイリースも家賃保証料を按分計上する割合を高めていますが、それでも契約月に売上計上する割合が高いので、四半期ごとの変動が大きくなります。
4社ともコロナの業績への影響は小さいと説明してきましたが、住宅確保給付金などの政策支援もあり、現状では売上は順調に推移しています。
住むところが無くなると再就職も難しくなるなど、生活再建への影響が大きくなるので、一時的に家賃を立て替えてもらえる家賃保証サービスの重要性は、コロナ下でより高まったと感じると同時に、保証にきちんと応えられるような安全性や信用力もより重要になってくるのでしょうね。

四半期ごとの経常利益推移は下記の通りです。
普通は営業利益で比較することが多いですが、家賃保証会社は大家さんに家賃を立替払いすることから、運転資金を銀行借り入れしていることも多く、支払利息も含めて比較した方が実態に合っていると考えて、経常利益で比較しています。

利益面でもイントラストの安定感は抜群ですね。
先日の個人投資家向け会社説明会でも桑原社長が強調していましたが、売上を按分計上していることで6か月先までの業績はほぼ見えている、ストック型に積みあがっていくビジネスモデルなので、業績が急に落ち込むこともない、逆に急激に業績が伸びることもなくて安定的に成長を続けていく会社という説明通りの利益推移です。
Casaも基本的にはイントラストに近いですが、利益面ではさらに保守的なので、四半期ごとの利益のブレが大きくなっています。
1Q(下記グラフでは4Q)に契約件数が伸びて、それに比例して管理会社への紹介手数料などの原価も増加します。上記のように売上は12か月に按分計上しますが、紹介手数料などのコストは発生月に計上しているので、3月は売上は1/12しか計上しないのに、紹介手数料などのコストは全額計上することになり、利益が減少します。2Q以降はその分コストが減るのに売上は按分計上されるので、利益が増加することになります。
y6.jpg
四半期ごとの経常利益推移を見ると、Casaとイントラストは右肩上がりの傾向、あんしん保証とジェイリースは横ばいでしたが、コロナによって利益面で変化が表れています。
コロナが影響しだしたのは2019年4Qからです。
Casaは一時的に家賃の立替が増加したことと、上記の1Q特有の要因から小幅赤字に転落しましたが、立替家賃の回収が徐々に進んでいることから2Qでは利益が回復しています。3Qではさらに回収が進んでいると思うので、利益がさらに伸びることを期待しています。
あんしん保証とジェイリースはコロナ下で利益が伸びています
この要因としてはコロナ下で立替家賃の回収が進んだためだと思われます。
下記グラフの通り、増加傾向だった求償債権が横ばいになったり、低下したりしています。立替家賃の新規発生が減ったり、立替えた家賃の回収が進めば求償債権の減少要因となり、その分利益が増えることになります。
求償債権が減った要因は、コロナ対策の住宅確保給付金の支給が本格化した影響も大きいと思います。
y12.jpg
ジェイリースが全国展開を始めたのは後発なので、売上を伸ばすために新規進出エリアでは管理会社に採用してもらうことを優先して、審査が若干甘かったのかなと思います。審査基準を緩めると家賃の滞納も増加して、求償債権が増加傾向になりますし、売上拡大が最優先で立替えた家賃の回収も後回しになっていたと思うので、求償債権はグングン伸びていきました。そのため売上は伸びるもののほとんど利益が出ないような状況が続いてきました。
その結果50億円を超えるまで求償債権が積みあがりましたが、2期前に監査法人に指摘されたこともあって、前期から債権回収にも力を入れるようになり、さらに住宅確保給付金の恩恵も受けて立替家賃の回収が進み、大幅に利益を改善することができました。
ただ立替金の残高内訳を見ると、1年以内の比較的回収しやすい短期債権は減っていますが、回収が困難な1年以上経過した長期債券は逆に増えています。短期債権の回収による利益改善は一時的な要因なので、この効果が薄れる来期以降、本当の実力を試される局面が来るのだろうと思います。(ジェイリースの2021年2Q決算補足説明資料より)
y3.jpg
経常利益率の推移は下記の通りです。
Casaの4Q(Casaの決算では1Q)の落ち込みは一時的な要因で3Q決算までには影響は解消されると考えています。
イントラストは高利益率を維持していて、ジェイリースとあんしん保証は利益率が大幅に改善しています。
y7.jpg
今期の家賃保証会社の利益の傾向は、おおまかに下記のような印象です。
1.以前から高収益で求償債権の管理もしっかりしてきた会社はコロナ下でも影響はほとんどない
2.求償債権の管理が後回しになっていた会社は、政策的な恩恵も受けて立替家賃の回収が進み、利益率が高まっている

前者のタイプは今後も安定成長を続けていくだろうと期待されますが、後者は回収しやすいものを回収して利益が実力以上に上乗せされている部分もあるので、今後利益がどう変化していくかは注視していく必要があると思います。

次回は今後の売上の見通しなどについてまとめたいと思います。
 応援ポチッとお願いします!
posted by アイル at 19:29| Comment(0) | 銘柄分析 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月19日

家賃保証会社2020Q2決算概要

家賃保証会社各社の第2四半期決算が出揃いました!(Casaは来月3Q決算を発表)
コロナ下でも各社とも順調に成長を続けているようです。
y5.jpg

y7.jpg
1Qに続いてコロナの影響も残る2Q決算の特徴としては下記の2点が挙げられます。
今まで安定成長してきた会社は、コロナ下でも安定成長を継続
今まで業績が低迷していた会社は、審査を厳しくして新規の立替金発生を減らしたり、住宅確保給付金などのコロナ下での政策支援も活用して、溜まっていた立替家賃の回収に力を入れたことで利益率が大幅改善
y14.jpg
株価の反応としては、利益水準より利益の改善幅が大きくて、株価のボラティリティも大きい会社の方が個人投資家に好まれて上昇しています。コロナ下でも安定成長している会社は、あまり変化が無くて興味を持ってもらえないのか、あまり人気は無い様です^_^;
機関投資家にはボラが少なくて安定成長している会社は好まれそうですが、各社の時価総額はまだ40億円から200億円程度なので、投資対象にはなりにくい印象です。
y10.jpg
売上成長で重要な指標である各社の保有契約件数ですが、ジェイリースは2Qと4Qしか件数を公表していないので、折れ線グラフが作れなくて傾向線を引いています。今期の2Q決算説明資料では開示内容が変更となり、保有契約件数も非開示になってしまいました。上記の傾向線通りに伸びているのかは不明です。
継続した分析のためにも、開示内容の変更は最小限にしてほしいものです。
ジェイリース以外の3社は、コロナ下でも直近の傾向通りの積み上げとなっています。

安全性や利益面で重要な指標である各社の求償債権推移(家賃の引き落としが出来なくて立替えている家賃額)を見ると、コロナ下で横ばいや低下に転じています。
y11.jpg
通常の経済状態でも毎月10%程度は家賃立替が発生しているので、普通は契約件数に比例して求償債権も増加していきます。
イントラストはコロナ下でも通常通りの求償債権推移となっています。
Casaはコロナの影響で一時的に家賃の立替が増加しましたが、回収を進めているので横ばい傾向になっています。
ジェイリースは監査法人から貸倒引当金が少ないと指摘を受けて計上方法を見直し、2期連続で過年度決算修正を行っているので、まずは大幅に増加した立替家賃の回収に力を入れており、直近の4四半期は横ばい傾向です。

各社の貸倒引当金割合は下記の通りです。
y15.jpg
ジェイリースは1年以上滞納している求償債権の割合が高いことを考えると、まだまだ引当金割合が低いと思います。
一方で63%も引き当てているCasaは、ちょっとやり過ぎだと思います(笑)
引当金割合を下げても問題ないと思いますし、その分利益も増加するので投資家からの評価も変わるのではないか思います。3Qでも求償債権の改善が進むなら、引当についても少し見直してほしいものです。
イントラストは他社よりも審査が厳しくて、大手不動産会社が顧客の大半を占めているので貸し倒れの発生が少なく、引当金割合も低くなっています。

ざっと概要を見てきましたが、何回かに分けてもう少し詳しく分析してみようと思っています。
来月にはCasaの3Q決算が発表されるので、今月中にはまとめたいと思っています^_^;
 応援ポチッとお願いします!
posted by アイル at 21:01| Comment(0) | 銘柄分析 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする