2020年11月26日

家賃保証会社2020年Q2決算分析4

家賃保証会社各社の第2四半期決算が出揃ったので、何回かに分けて分析してみます。

貸倒引当金割合の捉え方には2通りあると思います。
1つは前回の記事でも書いたように、引当金割合が低いと想定以上に家賃の焦げ付きが発生した場合、損失処理が必要になって利益が減ってしまうので、リスクが高いという捉え方です。
もう一つは全く逆で、引当金割合が低いということは、求償債権の中身が良好(比較的回収しやすい債権の割合が高い)で少額の引当金で十分であり、リスクが低いという捉え方です。
各社がどちらの状況に近いのか考えるためには、求償債権の中身が開示されるのが一番ですが、なかなか開示されないので、引当金割合の過去からの推移や利益率などを総合的に見る必要があると思います。
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引当金割合の過去からの推移は上記の通りです。
イントラストのように引当金割合が一貫して低下しているということは求償債権の中身が良くなっていると考えられるので、良い傾向だと思います。債権の中身が良いということは立替家賃の回収が容易ということなので、貸倒れコストが最小限で済み、その分利益率も高くなります。家賃保証事業にとって貸倒れコストの影響は大きいので、利益率が高い=貸倒れコストが少ないとも言えると思います。
あんしん保証の場合は、引当割合が最近は上昇傾向で、引当金割合も比較的高めです。あんしん保証は信販会社と提携して初期の貸倒れリスクを負わない商品が中心でしたが、自社で保証する商品の割合を徐々に高めている影響が出ているのではないかと考えています。
Casaの引当金割合は、上下の変動はありますが横ばい傾向で、かなり高い水準になっています。Casaの利益率が比較的高いことを考えると、会社側が説明しているように保守的に貸倒引当金を積んでいるという説明に、特に違和感は感じていません。
ジェイリースの場合はイントラストと逆で、一貫して引当金割合が上昇しています。
これは全国展開を進めて、比較的貸倒れが発生しやすい都市部の割合が高くなってきたこと、回収より売上拡大が優先されてきたことなどが要因だと思いますが、まだしばらくは貸倒引当金の積み増しが続きそうです。
ジェイリースは今回の2Q決算から説明資料の内容が一新されて、省略された開示内容も色々ありますが、一方で新たに開示された資料もあります。
前回の記事でも紹介した代位弁済立替金(求償債権)の期間別内訳を示したグラフです。
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これはとても重要なグラフだと思いますが、残念ながらそれぞれの内訳の数値が分からないので、グラフの高さから数値を想定してグラフを作り直してみました。
滞納発生から期間が経つにつれて回収は難しくなっていくので、決算説明資料とは上下を逆にして期間の長い方から積み上げグラフにして、立替金の貸倒れに備えて引き当てている貸倒引当金の水準を折れ線グラフで重ねて表示しました。
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このグラフを見ると、回収のしやすい3か月以内の立替金から回収が進み、この半年で総額は若干減少しています。一方で回収難易度の高い1年超の立替金は増加しています。3か月から1年以内も減少していますが、回収できたものもあると思いますが、回収できないまま半年が経過して1年超になったものもかなりありそうです。立替金の中身は悪くなっていると言えると思います。
それに対して現状の貸倒引当金の水準は、1年超の立替金を回収するのは困難を伴うので、まだ不足している水準だと思います。この3本のグラフ推移を見ただけでも、半年ごとに1年超の立替金の割合が増加しているので、回収するなり損失処理するなりしないと、今後も時間が経つにつれて1年超の部分が増加していきそうです。
とはいえ期間別の立替金内訳を開示したのは、現状を理解するうえでとても良いことだと思います。他社にも広がると比較しやすくて良いですし、投資家や株主の安心にもつながると思います。他社も追随すると良いですね。

次は株主資本比率を比較してみます。
ジェイリースだけが10%程度と低くて、他社は50%から70%程度と高水準です。
保証会社なので財務面での安全性も重要であり、株主資本も厚い方が顧客からも安心されると思います。
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家賃保証事業では保証料を事前に受け取りますが、受取時にすべてを売上計上するのではなくて、サービス提供期間に渡って按分計上しています。そのため受け取った保証料は、売上に計上するまでの間は前受金としてバランスシートに計上されています。これは負債扱いですが、実質的には将来の売上であり、保証料は受け取り済みで返還もしないので、誰かに支払い義務のある負債ではありません。
売上が伸びている会社ほど前受金の影響が大きくなり、負債が多いように見えてしまうので、前受金を除いた株主資本比率の方が実態を表していると思います。
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前受金を除くと、Casaとイントラストは80%前後まで跳ね上がり、ジェイリースも若干改善します。
Casaとイントラストは財務面でも他社より安全性が高いと言えますね。

株主資本比率の過去からの推移は下記の通りです。こちらは前受金の修正はしていません。
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Casaとイントラストは高値圏で安定推移(笑)
ジェイリースはずっと低空飛行、あんしん保証は高値圏から低下傾向です。
自社で保証したり、家賃の事前送金型のサービス割合が高くなると、一時的に立替払いする家賃が増加して運転資金の借り入れなども必要になるので、事業の拡大に伴って低下してくるのはやむを得ないと思います。最近は50%前後で落ち着きつつあるので、問題になるような水準ではないと思います。
リスク面に関係する数値を比較すると、ジェイリースの弱さが目立ってしまいますね。
売上拡大優先でここまできた影響ですが、前期から行っている体制整備で今後どのような変化が表れてくるのか、四半期決算ごとに見守っていきたいと思います。
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posted by アイル at 22:08| Comment(0) | 銘柄分析 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする