2020年11月25日

家賃保証会社2020年Q2決算分析3

家賃保証会社各社の第2四半期決算が出揃ったので、何回かに分けて分析してみます。
今回はコスト面で影響の大きい求償債権(保証会社が立て替えた家賃)について比較してみます。

家賃保証事業で最大のリスクは家賃の立て替えが増加すること、そして立て替えた家賃の回収が困難になることです。立替えた家賃は求償債権に計上されます。
家賃が引き落とせないのは初回の振替時が多いので、新規契約が増えていくと求償債権も増加しますし、保有契約件数が積み上がっていくと求償債権も増加していきます。そのため契約の増加に比例して求償債権が増えている分には問題ありません。
各社の求償債権の推移は下記の通りです。上場時期が異なるので、可能な限り過去にさかのぼってグラフ化しています。
参考までに売上推移グラフも貼っておきます。
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売上はCasaの方がジェイリースより大きいのに、求償債権の額はジェイリースの方が圧倒しています。イントラストとあんしん保証はほぼ売上に見合った水準になっています。
ジェイリースは売上拡大が最優先という感じで事業展開してきたので、立替家賃の回収が後回しになり求償債権も積み上がっていました。立替えた家賃は3か月を超えると回収が段々と困難になり、1年を超えるようだと回収は困難で裁判などに移行するケースが多くなります。
求償債権が積み上がっていくと長期の債権の割合も高まってくるので、貸倒引当金の計上額が足りなくなり、監査法人の指摘もあって貸倒引当金を積み増すことになり、2年連続で過年度決算の訂正を行っています。
そのような状況なので、営業部門の人員を債権管理部門に回すなどして求償債権の回収や管理強化を行い、その効果が出ているようでここ1年ほど求償債権の推移が横ばいになっています。
下記のグラフは保証残高(毎月保証している家賃の総額)と求償債権、それに対応する貸倒引当金の推移をまとめたものです。
保証残高も重要な指標ですが、ジェイリースは年2回しか公表していないので、プロットと傾向線の表示になっています。最新の2Q決算では開示されなくなったので、現状どうなっているのかは分かりません。重要指標は良い時も悪い時も継続して開示してほしいものです^_^;
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普通は保証残高に比例して求償債権も増加し、同様に貸倒引当金も増加していきますが、ジェイリースは求償債権の伸びが高過ぎました。最近は伸びが低下していますが、求償債権の動向は重要なので今後の傾向を注視する必要があると思います。

Casaは2016年頃に立替家賃の回収方法を変更し、まずは顧客に寄り添って生活再建を支援することで家賃の回収につなげる方針にしたため、一時的に求償債権が増加し、その後徐々に回収してきたので2018年頃までは横ばい傾向で推移してきました。2019年度からは契約件数の増加に比例する形になって正常化しましたが、コロナの影響で一時的に求償債権が増加し、現状は一時的な増加分を回収中です。
イントラストは契約件数の増加に比例して推移しています。
あんしん保証もほぼ同様の傾向ですが、直近では減少しています。

求償債権比率の推移を見ると、各社の違いがより明確になります。
求償債権比率=求償債権/保証残高
イントラストは保証残高を開示していないので、求償債権比率が計算できません^_^;
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契約件数が増えていくと保証残高も増加していき、毎月ほぼ一定割合で家賃の立替が発生するので、求償債権比率は普段は7〜9%前後でそれほど変動しません
Casaはコロナの影響で一時的に悪化しましたが、すでに低下傾向です。来月発表される3Q決算でどのような推移になるのか注目しています。
これら2社と比べてジェイリースは一貫して増加傾向が続いてきました。直近では横ばい傾向ですが、今まで2Qと4Qに開示されていた保証残高の開示が今2Qは無かったので、足元どの程度改善しているのかはよく分かりません。

最近は横ばいになったとはいえ求償債権額が一番大きいジェイリースですが、立替家賃が回収できないリスクに備える貸倒引当金の引当割合は他社より低い水準です。イントラストは優良顧客向けが多いので引当割合が低くなっています。
Casaは2016年、2017年頃に回収方法の変更で貸倒れが増加しましたが、貸倒引当金の計算上過去3年の実績値を使っているので、まだ影響が残っていて引当割合が高くなっています。4Qで実績値に洗い替えするので、今期の貸倒実績率が2017年実績よりも低ければ、4Qで貸倒引当金割合が低下することになり、利益改善要因になります。
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ジェイリースも貸倒引当金の計算方法は同じような感じなので、4Qで実績値に洗い替えされます。
今回の決算説明資料で開示された求償債権(ジェイリースでは代位弁済立替金)の期間別内訳では、回収が困難な長期債権の割合が高くなっており、この部分にはより多くの貸倒引当金を計上する必要があるので、4Qで貸倒引当金を積み増す必要が出てくるかもしれません。
3Qまでは比較的回収しやすい期間の短い債権を回収して利益が増加していますが、長期債権の動向については今後も注意が必要だと思います。

貸倒引当金割合の推移は下記の通りです。
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Casaは2016年、2017年頃に貸倒れが増加した影響で引当金割合が上昇していましたが、ピークは越えて今後は徐々に低下傾向になっていくと予測しています。過去の水準や他社と比較すると、Casaも50%くらいで落ち着くのかなという感じです。
イントラストは2014年頃まで立替家賃の急増に苦しんでいたので引当金割合も高水準でしたが、立て直しに成功してからは低下傾向が続いています。こちらもどの程度の水準で落ち着くのか気になりますね。
ジェイリースは地盤の九州で事業展開していた頃は貸し倒れることも少なかったので、あまり引当金を積んでいませんでしたが、そのままの体制で全国展開を進めて一気に売上を拡大したため、回収にまで手が回らず求償債権が急増することになりました。過去の回収実績が高かったことから貸倒引当金の繰入額も本来の必要額よりも小さくなり、貸倒引当金の積み増しが必要となり、過年度決算の訂正となりました。上記の通り引当金割合は年々高くなってきましたが、これで十分なのかは分かりません。こちらもどの程度の水準で落ち着くのか気になりますね^_^;
これらの数値は財務諸表で四半期ごとに状況が把握できるので、今後も継続して推移を見守っていきたいと思います。

家賃の立替えが増加して回収に時間がかかるようになると、毎月求償債権が積み上がっていきます。立替えた家賃は時間が経つにつれて回収はより困難になり、回収に要するコストも上がっていきます。回収が困難になると貸倒実績率が高くなるので、貸倒引当金の積み増しが必要になり、利益を圧迫することになります。
貸倒引当金必要額=求償債権額×貸倒実績率 なので、求償債権が増加すると額も率も高くなるという負のスパイラルに落ち込むリスクが高まります。保証残高や売上の伸びと乖離するような求償債権の増加には、十分に注意した方がいいと思います
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posted by アイル at 18:19| Comment(0) | 銘柄分析 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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