2020年08月09日

家賃保証会社の貸倒引当金分析

家賃保証会社の1Q決算分析記事の続編です。
今回は家賃保証会社の利益面やリスクを考えるうえで重要な求償債権や貸倒引当金について、4社の比較をしてみたいと思います。

各社の最新決算の貸借対照表から、求償債権と思われるもの(会社によって名称が一部異なっている)と貸倒引当金をグラフ化してみました。
求償債権の定義や範囲も各社で異なっているので単純比較はできないと思いますが、詳細は開示されていないので総額で分析してみます。
赤枠棒グラフの求償債権は、決算期末時点で家賃保証会社が立替えている家賃の金額です。
これらについては順次回収を行っていくわけですが、口座番号の記入ミスやたまたま残高が不足していたなどですぐに回収できるものもあれば、失業などによって回収がしばらく困難なケースなど様々です。これらの債権が回収できなかった場合に備えて積み立てているのが貸倒引当金になります。
貸倒引当金の計算方法などは各社で異なっているので、こちらも単純比較はできませんが、求償債権に占める貸倒引当金の割合を比較すると各社の考え方が見えてくると思います。
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貸倒引当金は貸借対照表の資産の欄に、資産を減額する要素としてマイナス記載されています。
一方で事前に積み立てている貸倒引当金以上に回収不能な家賃が増えた場合は、貸倒引当金を積み増す必要があり、利益を減らす要因になります。逆に必要以上に積み立てていた場合は、貸倒引当金戻入れ益という形で利益増加要因となります。
この4社を比較すると、Casaとジェイリースは事業構造は比較的似ているので、比較しやすいと思います。
イントラストは売上の半分程度がソリューション事業なので、単純に比較するのは難しい印象です。
あんしん保証はCasaやジェイリースに近いですが、一部の貸倒リスクを信販会社に移転しているので、単純には比較できない感じです。

求償債権に対する貸倒引当金の割合を見てみると、Casaが異常に高くて、次いであんしん保証、同率でジェイリースとイントラストとなっています。
Casaは4月末時点の数値で、他社は6月末の数値という違いがあるので、これもまた単純には比較できません。
4月下旬から5月にかけての時期が一番先行きが見通しにくかったので、Casaは緊急事態宣言による家賃立替の増加を見込んで、予防的に貸倒引当金を積み増しているのではないかと考えています。

貸倒引当金割合については下記の様に考えることができます。
貸倒引当金割合が高い、高まっている=利益にマイナスの影響がある
(1)求償債権の質が悪くて回収不能なものが多いので、貸倒引当金割合が高くなってしまう。
(2)経営陣が慎重で保守的に貸倒引当金を積み増しているので、貸倒引当金割合が高くなっている。
貸倒引当金割合が低い、低下している=利益を増加させる効果がある
(3)求償債権の質が良いのでほとんど回収可能であり、貸倒引当金は最小限で大丈夫!
(4)経営陣が革新的(笑)で、実力以上に利益を多く見せるために、貸倒引当金を最小限にしている。

(1)と(3)は求償債権の実態に合わせた貸倒引当金なので通常の対応です。
ただ今回のコロナの様に想定外の出来事が起こると、貸倒引当金割合が低いのはリスクになります。
(2)は実際に家賃の回収が進めば戻入れという形で貸倒引当金は減少するので問題はありませんが、投資家的には、保守的に貸倒引当金を積み増すと利益が実力より少ない印象になってしまうので、ちょっと困ります^_^;
(4)は見た目の利益は出ている様に見えますが、回収が滞ると貸倒損失の計上で結局は利益が減ってしまいますし、あまりにも引当てが不足していると、監査法人から怒られます(笑)

私の印象では、現状のCasaは(2)のケース、ジェイリースは(4)に近いのではないかと思っています。

売上の規模では、Casa、イントラスト、あんしん保証、ジェイリースの順になりますが、
求償債権額では、ジェイリース、Casa、あんしん保証、イントラストの順になります。
売上規模と比べて求償債権の割合が高いのがジェイリースになります。今までは売上の拡大が最優先で、債権回収が後回しになっていた影響なのだろうと考えています。ジェイリースは求償債権の額では一気にトップに躍り出ています
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最新の貸倒引当金割合の状況は最初のグラフの通りですが、この水準になるまでには紆余曲折があったでしょうから、過去からの推移も重要になります。そのため遡れる範囲で貸倒引当金割合の推移を見てみます。
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ジェイリースだけ異常に低かったことがよく分かりますね。2015年度の途中まで10%以下でした!
ジェイリースは大分から全国展開をしているので、地元中心に事業展開していた頃は地域の目もあってほとんど回収できていたのでしょうね。全国展開を進めることで、貸倒れの発生も全国平均レベルに上がっていったと思いますが、貸倒引当については基準の見直しが後回しになり、監査法人からも注意されるようになって、貸倒引当金の計上方法の見直しを行い、それが過年度決算訂正という形になっています。
結果として年々貸倒引当金割合も上昇し、他社並みの現在の水準に見直されてきました。

あんしん保証は以前は50%近かったものの、30%程度まで徐々に低下していました。それがまた上昇してきて以前の50%近くまで戻ってきています。あんしん保証は自社保証商品を拡販しているので、貸倒引当金の割合も高くなってきているのだろうと思います。

イントラストは自社保証からソリューションサービスに切り替えているため、引き当てる必要性が低下しているのだろうと思います。

Casaは入居者に寄り添った回収方法に見直した影響から回収不能になる債権が増加し、18年度4Qに70%近くまで高まりました。その影響も一巡して徐々に低下していましたが、コロナの影響で再度貸倒引当金を積み増したというのが現状です。
Casaは以前の説明会で、貸倒引当金割合が高いのは安心感の表れという見方もできるという様な説明をしていたので、目先の利益を出すことよりも中長期的に安定成長を続けていくことを重視して、引当金も保守的に積み増しているのかなと理解しています。
保証会社にとっては顧客から信頼されること、財務面でも安全性が高いことが重要だ、と身に染みて理解しているのがCasaだと思いますので、保守的に引当金を積み増すのもCasaらしいのかなとは感じます。
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posted by アイル at 17:31| Comment(0) | 銘柄分析 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする